目で読むSDGs図鑑⑤エネルギー問題の解決に向けて、できることを考えてみよう!
日本は、石油をはじめとする燃料のほとんどを輸入にたよっています。私たちの生活に欠かせないものですが、輸入にたより続けてもよいか、考えてみましょう。
みなさんがおじいさんやおばあさんになるころには、
地球から石油がなくなっているかもしれません(注1)。
出典:資源エネルギー庁『エネルギー白書2022』
生活に必要な電気と発電
みなさんは、ふだん生活している中で、なくなったら困るものは何ですか? スマートフォン、お金、友達からもらったプレゼント......いろいろ挙げられると思いますが、もし生活から「電気」がなくなったらどうでしょうか。夜になっても部屋は暗いままですし、スマートフォンも充電できません。電気がないとほとんどの人が困ってしまうのではないでしょうか。
では、この「電気」はどのようにつくられているのでしょうか? 生活に必要な電気は、発電所や発電機のある施設でつくられます。日本では、①石油や石炭などの化石燃料を燃やす火力発電、②水が流れ落ちるときの力を利用する水力発電、③ウランという燃料を使って発生した熱を利用する原子力発電の、主に三つの方法で発電しています。また、風力や太陽光などの再生可能エネルギーを使う方法もあります(注2)。
下のグラフは、2021年の日本の発電量の内訳を表しています。空欄A〜Cには火力発電、水力発電、原子力発電のうち、それぞれどの発電方法が入るのか、予想してみましょう。
出典:国際連合『2021 Energy Statistics Yearbook』
正解は、A・水力発電、B・火力発電、C・原子力発電となります。日本では発電量の7割以上を火力発電でまかなっていることになります。火力発電は、石油や石炭があれば必要な分だけ発電できるので、安定して供給できるメリットがありますが、地球温暖化の原因となる温室効果ガスを多く発生させるデメリットがあります。
火力発電は、化石燃料を燃やして水を熱したときに発生する
水蒸気の力でタービンを回しています。
タービンが回ることで発電機の軸が回り、電気がつくられます。
*注1:時間の経過とともに可採年数が減るわけではありません。新しい油田が開発されたり、採掘技術が進歩したりすると可採年数は増えます。
*注2:再生可能エネルギーを使った発電方法に、水力発電をふくめる考え方もあります。
日本のエネルギー問題
日本のかかえる問題として、外国と比べてエネルギー自給率が低く、多くの資源やエネルギーを輸入していることが挙げられます。そのため、戦争・紛争や災害などが起こって国際情勢が不安定になると、エネルギーを安定的に確保できなくなるおそれがあります。
また、石油や石炭の埋蔵量には限りがあります。あと何年にわたって生産・採掘ができるかを示した数値を可採年数といいますが、石油の可採年数はおよそ53.5年(2020年末時点)、石炭の可採年数はおよそ139年(2021年時点)といわれています(注1)。火力発電で化石燃料(石油や石炭などの燃料資源の総称)に依存している日本は、再生可能エネルギーを使った発電を増やす必要があります。
エネルギーを少しでも長く使うために
地球温暖化やエネルギー問題を少しでも解決するために、例えば、買い物に行くときにマイバッグを持参したり、歩けるきょりなら電車やバスの使用をひかえたり、冬の時期には暖房の温度を下げたりするなど、温室効果ガスの排出量を減らす取り組みが大切です。
また、無駄の少ない、効率的なエネルギーの使い方について考えてみてもよいでしょう。例えば自宅でお湯が必要になったら、ガスや電気などでお湯をわかす方法が考えられますが、太陽熱温水器という装置を使えば、太陽光のエネルギーだけでお湯をつくることができます。お湯をわかすのに必要なガスや電気を別のことに使えるので、省エネルギーにつながります。 一人一人が省エネルギーを意識することで、エネルギー問題の解決が見えてくるのです。
今日から私たちにできること
1環境に優しい取り組みを実践する
買い物でついついレジ袋をもらってしまったり、近いきょりでも電車やバスに乗って移動してしまったりすることはありませんか? こうした行動を見直すことは、温室効果ガスの排出量を減らすことにつながります。無理のない範囲で実践し、ほかにもできることを考えてみましょう。
2さまざまな発電方法に関心を持つ
企業などでも、環境に優しい方法で発電する研究や設備の開発が進められています。ニュースなどで見聞きしたら、発電に使うエネルギーや発電の仕組み、発電量などについて調べてみるとよいでしょう。
日本航空は、環境に優しい、持続可能な燃料(SAF*)の製造に取り組んでいます。横浜市や地域のスーパーマーケットと協力し、家庭から出た廃食油(料理などで使用した後の油)を回収する取り組みを行っています。SAF は石油などを原料にしたジェット燃料よりも、製造時の二酸化炭素の排出量を減らすことができます。日本航空では2030年度までに、使用する燃料の10%をSAFに置き換えることを目指しています。
*SAF の正式名称はSustainable Aviation Fuel
⇐SDGs について学べるサイト「EduTown SDGs」でも、日本航空の取り組みを紹介しています。
文・「青いスピン」編集部 校閲・出口憲(常葉大学) イラスト・磯田裕子