地球温暖化や都市化の影響で、世界中で長期的に気温が上昇しています。気温がこのまま上がると、熱中症になる人が増えたり、感染症にかかる人が増えたりするだけでなく、水不足などの問題や、洪水や干ばつなどの災害がくり返し起こる可能性が地球規模で高まってしまいます。私たちはどのように対応していけばいいのでしょうか?
洪水、嵐、土砂くずれ......。
1970年代、地球上で711件の気象災害が発生した。
地球温暖化の影響で、気象災害の件数が約5倍に!
このままだとさらに増えてしまう。
出典:「WMO Atlas of Mortality and Economic Loss from Weather, Climate and Water Extremes (1970-2019)」
温室効果ガスが地球をじわじわ暑くする
「夏ってこんなに暑かったっけ?」「今年は冬が短いような......。」
季節が変わるたびに、そんな気持ちになりますよね。
「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)の報告書によると、現在の世界の平均気温は、18世紀よりも1.1度ほど上昇しています。さらに、2100年には最大5度上昇するとも。地球上の雪や氷が溶けて海面が上昇したり、夏には猛暑が続き、とうてい外を出歩けなくなったりします。
このじわじわと上がる気温について「原因は大気中の温室効果ガスの増加です。」と吉田先生。温室効果ガスには火力発電で電気をつくったり、ガソリンを燃やして自動車を走らせたりするときに出る二酸化炭素も含まれます。私たちが化石燃料を燃やすほど、地球温暖化に拍車がかかるのです。
「IPCCは、2021年の最新の報告書で、人間の生活が温暖化に影響を与えたことに『疑う余地がない』と断定しています。」
極端現象による災害が50年間で5倍に増加
地球温暖化は、猛暑や豪雨などの極端な気象現象(極端現象)が頻繁に起こる原因の一つと考えられています。たとえば、1990年代以前の日本全国の平均気温を見てみると、最高気温が35度を超える猛暑日は、1年間で1日程度。しかし、この30年の間に、約2.7日まで増えています。
「1時間あたりの降水量が80mmを超える『猛烈な雨』も増えています。2013年から2022年にかけての年間発生回数はおよそ25回。1976年から1985年にかけてのデータと比べると、約1.8倍に増えています。」(図1)
図1 全国アメダスの1時間降水量80mm以上の年間発生回数
出典:気象庁
2013年から2022年にかけて、降水量80mm 以上の雨の平均年間発生回数は約25回。これを1976年から1985年にかけての平均と比べると、約1.8倍に増えていることになります。気象庁によると、降水量80mm以上の雨は、人によっては息苦しさを感じるほどの激しさとのこと。もちろん、傘も役に立ちません。
https://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/extreme/extreme_p.html
極端現象は、ときに災害規模にまで深刻化。世界気象機関(WMO)の発表では、極端現象による災害は50年前と比べて約5倍に増えています。
吉田先生は次のように話します。「異常気象や極端現象は、本来、大気の状態や海洋の動きなどの条件が絡み合って発生する、地球が持つ自然の変動(ゆらぎ)の一環です。しかし、近年の研究によって、地球温暖化は、猛暑や豪雨の発生頻度を高めていることが分かってきています。地球温暖化の傾向が続いた場合、災害の回数が増えたり(頻発化)、規模や範囲が大きくなったり(激甚化)する可能性がさらに高まることが予測されます。」
もはやSDGsの目標13「気候変動に具体的な対策を」は待ったなしの状況なのです。
進行を「抑え」ながらリスクに「備える」暮らし
気候変動への対策には、「緩和」と「適応」の二つがあります。
「緩和」とは、地球温暖化の進行を「抑える」行動。節電したり、自転車や公共交通機関を活用したりすることが、二酸化炭素排出量の削減につながります。
これらの対策は今まで広く知られてきましたが、その効果が表れるのにはたいへん時間がかかります。だから、地球温暖化によりすでに起きている、あるいは起きるであろう状況に対して、リスクを減らすこと、それに「備え」た暮らしをすることも大切です。季節に合った服装をしたり、災害に備えて防災バッグを用意したり、ハザードマップ(注1)で、自分の住んでいる地域の地形や危険な場所、過去の災害とその被害状況を把握することも役立ちます。こうした取り組みは「適応」と言われ、「緩和」と並んで重要な考え方です。
今、世界中の人たちが、それぞれの地域や自分たちの生活に合った方法を模索し、地球温暖化の緩和や気候変動への適応に挑戦しています。そのためのさまざまな技術革新も進み、楽しく参加できる仕組みを考えている人もいます。日々の暮らしの中でどんなことができるでしょう。あなたも考えてみてくださいね。
気候変動 今日から私たちにできること
1 地球温暖化の進行を「抑える」
二酸化炭素の排出量を抑える取り組みは、温暖化対策の基本。節電や省エネ、交通手段の工夫などは、今日から実践できますね。また、新たな資源とエネルギーの使用を削減するため、このごろはリユース素材を使った製品も手に入れやすくなっています。もちろん、モノを長く使い続けることも立派な対策です。
2 環境の変化に「備える」
気候変動で変化していく環境への「適応」も求められます。熱中症予防やクールビズなどもそのひとつです。新しい技術や価値観も生まれており、今後は、暑さに強い野菜が開発されたり、これまで農地として利用されていなかった土地で農業が始まったりすることも考えられます。
*注1:自治体で配られるほか、国土交通省のハザードマップポータルサイト(https://disaportal.gsi.go.jp/)からも情報が得られる。
取材、文・名嘉山直哉 イラスト・磯田裕子
監
国立研究開発法人 国立環境研究所
ごみ問題やリサイクルの