目で読むSDGs図鑑⑦ 平和のために、できることは何か考えてみよう!
みなさんは、SDGs17の目標のうちの一つ、「平和と公正をすべての人に」を知っていますか? 「平和と公正」について考えたことはありますか? 平和とはどのようなことを指すのでしょうか。今回は、日本赤十字社の篠﨑さんにお話をうかがいました。

世界では、4分間に1人、暴力(*注1)によって
子どもが亡くなっています。
*(注1) 暴力には、家庭での子どもに対する暴力や、戦争による暴力などがあります。
戦争・暴力にさらされる子どもたち
「平和と公正をすべての人に」のターゲットの一つに「あらゆる場所で、あらゆる形の暴力と、暴力による死を大きく減らす」というものがあります。戦争による暴力を受ける子どもは、今も世界中に大勢いるのです。
戦争がなければ平和?
戦争がなければ、戦争が終われば、平和といえるでしょうか。戦争がないだけでは、平和は実現したとはいえません。世界で人々の命を守るために動いている団体の一つ、赤十字では「平和」とは次のようなことだと考えています。
赤十字が考える「平和」は、単に「戦争がない状態」だけではありません。人々が自由に生き、自らの意思で行動でき、おたがいを尊重し、支え合いながらともに暮らしていける状態が「平和」です。また、「公正」とは、全ての人が偏見なく、正当にあつかわれることです。その実現には、説明責任と透明性を備えた法制度にだれもがアクセスできることが必要です。
「平和と公正をすべての人に」を目指すためには、私たち一人一人が「何がみんなにとって正しいのか」を主体的に考え、対話や協力を重ね、社会をよりよくする努力を続ける必要があります。戦争を経験してつらい思いをした人は、「平和は待っていても自動的に来るものではない。みんなが努力して築くものだ。」と語っています。
戦争が起こったとき、人道を実現するために
戦争や災害が、もしも起こってしまった場合、どうするのでしょうか。例えば、赤十字は、ウクライナやガザをはじめ、世界の紛争地や被災地で命を守る活動を行っています。たとえ戦争中であっても、最低限人々の命と尊厳が守られるように、定められているルールがあります。「国際人道法」といいます。具体的には次のようなものです。
・負傷者や病人は敵味方問わず保護する。
・市民や子どもを攻撃してはいけない。
・医療施設や赤十字のマークを付けたものは攻撃しない。
・公正な裁判を受ける権利が保障され、拷問は禁止される。
・ダメージを無差別にあたえる兵器は使用しない。
こういったルールをもとに、紛争地で命を守る活動が行われているのです。ですが、このルールを無視して、攻撃を行う人も少なくないのが現実です。みんながルールを守るようにするためには、どうしたらよいでしょうか。みなさんも考えてみませんか。
核兵器について考えよう
二〇二五年は第二次世界大戦終結から八十年の節目にあたります。日本でも、沖縄戦や東京大空襲、原子爆弾投下など、戦争で、多くの市民がぎせいとなりました。SDGsを作った国際連合(国連)は、第二次世界大戦を防げなかった反省から、国際の平和と安全を目的に設立され、「戦争は原則禁止」という内容をふくむ国連憲章を定めています。また、第二次世界大戦で苦しんだ人々の経験から、国際人道法も最初につくられたときから現在にかけて、発展してきたのです。
みなさんは、今年の八月、どのように過ごしたでしょうか。八月六日は広島、九日は長崎に原子爆弾が落とされた日です。 このことから、一つ考えてみてほしいことがあります。
無差別大量破壊兵器である「核兵器」についてです。核兵器については、持っている国に対して、戦争をしかけにくくなるという点から、これを戦争の「抑止力」と呼び、有効だという声や、究極の自衛手段だと語る声もあります。しかし、核兵器を使用した際には取り返しのつかない大きな被害が発生し、政府や団体ががんばっても、救援が追いつかないという現実があります。また、実際には核兵器を保有している国が自ら戦争を始めることや、核兵器をねらった攻撃が起こる可能性や誤作動で核兵器を使用してしまうといったリスクもあります。みなさんは核兵器についてどのように考えますか?
今日から私たちにできること
1丨ルールを守ってもらうためには多くの人に知ってもらうことが大切
私たちにできることは、まず「ルールがある」ことを知ることです。一人一人がルールを学び、大切だと感じたら、周りの人と話してみてください。みんなが「大切だ。」と思っていくことで、ルールを守らない人にも「それはちがう。」と気づいてもらう力になります。例えば、国際人道法や核兵器禁止条約といったルールを知り、支持していくことで、世界を少しずつ変えていけます。


赤十字の始まりは、19世紀に出張中だったスイス人のビジネスマン、アンリー・デュナンが戦場を見て、「敵味方関係なく、苦しむ人は救うべきだ。」とうったえたことでした。そこから共感の輪が広がり、赤十字という人道支援のネットワークが生まれました。赤十字は、核兵器の脅威やリスクのない世界を実現するために、これからも各国と協力して取り組みを続けていきます。赤十字はSDGsを直接の目標にしているわけではありませんが、「貧困をなくそう」「すべての人に健康と福祉を」といったSDGsの目標に大きく貢献する活動をしています。
イラスト:磯田裕子