第1回「青いスピン」作品募集 結果発表
第1回「青いスピン」作品募集には、361作品の応募がありました。たくさんのご応募、ありがとうございました。厳正な審査の結果、次のとおり受賞作品を決定いたしました。
結果発表
入選 「自動販売機」香久山ゆみ
いちかちゃんと、のださん、「私」は同じグループ。ある金曜日、「深夜0時に公園の裏の自動販売機の取り出し口に手を入れると、引きずりこまれる」といううわさが話題になった。いちかちゃんは、のださんに、うわさを確かめるよう言いつけた。夜中に外出なんてできるはずがないのに。次の週、私たちはそのことをすっかり忘れていたけれど......。
入選 「金太の花」おぎなお紺
飼っていた金魚の金太を、不注意で死なせてしまった「ぼく」。金太は、一年前のお祭りですくった金魚だ。庭に穴をほり、金太を埋めて、お墓を作った。小さな弟の優介が、「大きくなあれ。」と、金太のお墓に水をかける。次の日、金太のお墓から芽が出てきた。芽はぐいぐいと大きくなっていく。もしかしたら、金太の花が咲くのだろうか。
入選作品は、「青いスピン」に掲載いたします。「自動販売機」は、第2号に掲載しております。「金太の花」は、第3号に掲載予定です。
佳作 「カタメのこと」松下卓
「ぼく」の小学校の通学路にあるアパートには、じいさんが独りで住んでいる。じいさんはいつも、のら猫のカタメの世話をしていた。ある冬の日、カタメがいなくなって......。
佳作 「言葉のない私たち」桜井かな
小学六年生の「私」は、友達のアマちゃんと交換日記を始める。しかし、書きたい言葉が思いうかばず、絵を描いてごまかしていた。クラスメートの小川さんも交換日記に加わりたそうな様子だが......。
選評
入選・佳作の作品について、選考委員の角野栄子先生、西本鶏介先生、安東みきえ先生よりコメントをいただきました。
入選 「自動販売機」
● 人物描写がうまい。自分というものをかろうじて保つために冒険に出て、自分の足で立つために友達と決別する「のださん」は魅力的。 (角野)
● ホラーテイストな作品と思いきや、いじめ問題に切り込んでいて驚いた。いじめの愚かさと怖さを両方描いている。(西本)
● 今回の応募作品は、友達関係に関する話が多かった。なかでもこの作品は、登場人物の強いアクションにより、ほのかなあかりが見えた。 (安東)
入選 「金太の花」
● 一つの問題にフォーカスしていて理解しやすい。心が通い合った存在を死なせてしまった悲しさがしっかり描かれている。 (角野)
● すみずみまで計算されている、よい作品だと思う。金魚の墓から芽が出てきてどんどん恐怖感を抱いていくところなどおもしろい。 (西本)
● 金魚が花となって咲き、呪いの言葉を吐くというイメージが、 奇妙でおもしろい。 (安東)
佳作 「カタメのこと」
● 作者の気持ちがまっすぐで、読んでいて気持ちがよい作品。ただ、もう少し「じいさん」の姿や、子供の気持ちが深く描かれているとよかったと思う。(角野)
● 素直な作品で、流れがしっかりしている。命の重さを分かりやすく書いていて、共感しやすい。 (西本)
● 猫がとても猫らしく描かれている。読み心地はよい。「じいさん」の亡くなり方が唐突に感じた。 (安東)
佳作 「言葉のない私たち」
● 文学作品としては、もう少し子供たちの心の奥を描いてほしい。二人の少女が自問自答するところが書けていたら、作品に深みが出たと思う。 (角野)
● 今の子供の現実を反映した作品。作者がこの現実をどう考え、どんなメッセージを伝えたいのか、もう少し描けているとよい。 (西本)
● 思いを言語化できない子供たちを、三者三様に表している。これだけリアルに描いたことを評価したい。 (安東)