第2回「青いスピン」作品募集 結果発表
第2回「青いスピン」作品募集には、240作品の応募がありました。たくさんのご応募、ありがとうございました。最終選考に残った作品は、次のとおりです。
「終点の母」 佐々木基成
「アタリ」 市原奈緒美
「ピンクの水筒」 丸坊てん
「迷子の道しるべ」 佐倉侑
「テントウムシの運動会」 林わお
「影取り池」 稲座さくら
「四色の毎日」 みなとしょう
「お花見」 春名伶
「タマゴボーロの夏」 伊東葎花
「裏道小道恋の道」 杉成恵佳
「大地と青ペンさん」 豊田愛
厳正な審査の結果、次のとおり受賞作品を決定いたしました。
結果発表
入選 「お花見」春名伶
ある春の夜、午前二時半を回った頃。真白は、弟の雪也に誘われて家を抜け出した。暗い方暗い方へと進んでいくが、不思議と恐怖心はない。どこに行くのか尋ねると、雪也は「お花見だよ。」と答えた。二人は、暗く細い山道を歩き続ける。
入選 「裏道小道恋の道」 杉成恵佳
中学生の沙希は、小学生の頃から仲良しの椿ちゃんとバレンタインのチョコを作ることにした。三人組のもう一人だった和久とは、近頃ほとんど話さない。椿ちゃんの家に向かう途中、逃げ出した猫を探す和久にばったり出会う。
佳作 「大地と青ペンさん」 豊田愛
大地は、小学六年生になって痛感した。勉強が難しい。ひどい点数のテスト用紙を丸めて投げていたら、窓から外に飛び出してしまった。慌てて拾いに行ったが見つからず、部屋に戻ると、青ペンで解説が書かれたテスト用紙が落ちていた。
佳作 「タマゴボーロの夏」 伊東葎花
夏休みの夜、親友の里沙が、突然家に泊まりにきた。里沙が背負った大きなリュックには、大量のお菓子が入っていた。「家中のお菓子を持ってきた。真子といっしょに食べつくそうと思って。」と、里沙は言う。
入選作品は、「青いスピン」に掲載いたします。「お花見」は、第4号に掲載しております。「裏道小道恋の道」は、第5号に掲載予定です。
選評
入選・佳作の作品について、選考委員の角野栄子先生、西本鶏介先生、安東みきえ先生よりコメントをいただきました。
入選 「お花見」
● 星や光の描写がきれい。亡き弟への思いを幻想的な風景に込めている。亡き弟と書いたけど、文中そのことにあからさまに触れずに、二行ばかりの伏線で感じさせるところがいい。(角野)
● 切なく、情感豊かな作品。亡き弟に誘われて花見に向かう情景が浮かんでくる。印象的で、構成もよくできている。(西本)
● 突出して美しい話。子供に読ませるにはかわいそうだと感じたが、読み応えがある。将来性を感じる作品だ。(安東)
入選 「裏道小道恋の道」
● ささやかな青春の恋の物語で、読んでいて楽しい。さわやかで、子供が共感できると思う。話の展開に猫がうまく活用されている。(西本)
● 子供にとって恋の話は王道で、その舞台に路地を選んだところが巧妙。男の子のほうからチョコを渡す、という点が自由でおもしろい。(安東)
● まずこのタイトルを思いつき、後から話を付け足したように感じた。この小道の雰囲気をきちんと書くことができれば、やや力まかせな展開も説得力が増したかもしれない。(角野)
佳作 「大地と青ペンさん」
● 「青ペンさん」と積極的につながりを持とうとする主人公のさわやかさは、読み心地がいい。(安東)
● ストーリー展開がおもしろく、興味深い作品。さわやかな友情が伝わってくる。だが、なぜ「青ペンさん」が物置に入っていたのか分かりづらく、リアリティに欠ける。(西本)
● ユーモアのある作品で、そこが捨てがたかった。この「青ペンさん」は学校に行っていないらしいとは分かるけど、なぜ物置にいたのか? そのあたりをきちんと書いてほしかった。(角野)
佳作 「タマゴボーロの夏」
● どうにもならないことへのささやかな抵抗として、お菓子を食べつくすという点がユニーク。タマゴボーロのもろさと優しさが、物語を深く印象づけている。(安東)
● 文章のテンポは軽快で、エンディングはいい終わり方だと思う。中学二年生はもっと、対処の仕方が複雑なのではないか。たとえ二行でも、中学二年生らしい会話がほしかった。(角野)
●中学生の視点で、家族に関する現代的な問題を描いている。切ない話だが、ストーリー展開はやや新鮮みに欠けるか。(西本)
選考委員
角野栄子先生(童話作家) 撮影:萩庭桂太/©角野栄子オフィス
西本鶏介先生(児童文学作家・児童文学評論家)
安東みきえ先生(児童文学作家)